米国への投資はトランプ大統領次第?

米国の未来はどうなる?

2019年6月、米国トランプ大統領がフロリダ州オーランドで、2020年11月の大統領選への出馬を正式表明しました。

トランプ大統領は、演説を行ったオーランドで「米国をかつてないほど良くする。それが2期目を目指して出馬を宣言する理由だ」と話し、「中国が米国の雇用を盗む時代は終わった」、「米国を偉大なままにする。決して失望させない」と付け加えました。

米国の分断を促進し、「アメリカ・ファースト」の政策を加速する再選戦略が本格的に動き出すと世界中のメディアが書き立てていますが、編集部の意見は若干異なります。

トランプ大統領当選時より、世界中ののメディアが「横暴なトランプ」、「予測不可能」と報じる中、編集部は本当にそのようであれば、再選どころか、大統領にもなれなかったと考えています。

トランプ大統領とメディアの関係は、プロレスや出来レースのようなもので、そのまま鵜呑みにしてはいけません。

また、トランプ大統領の行動は、行き当たりばったりのように思われますが、その後ろには、巧みなブランディング戦略があります。

ロゴや使用できるカラー、デザインの仕様書、献金者用、保守メディア用、リベラル・メディア用に分けられたオフィシャルな写真まで、「トランプ・ブランドブック」には事細かに書かれており、近年の大型選挙戦略では当たり前になった「ケーブ」が、すでに作られています。

この「ケーブ」とは、英語でThe Caveと書き、洞穴や洞窟を意味します。

2012年のバラク・オバマ大統領再選の時に注目された「ケーブ」は、選挙対策本部の真っ暗な部屋に巨大サーバーにつながれたコンピュータを並べ、効果的な手を打つために各州の有権者のデータを統合しました。

その嗜好や動向を把握分析し、オバマ氏は見事再選しました。

これは、アドテクなどに使われるデジタルマーケティング戦略を、選挙戦に流用したものです。

このデータに従い、オバマ氏はジョージ・クルーニーの影響力が高いと判断して彼による食事会を設けて資金集めに成功し、勝敗の鍵を握る激戦州での選挙結果をさまざまなシナリオを想定して、毎晩6万6000回もシミュレートするといったことが「ケーブ」で行われました。

いまや、アメリカ大統領選挙とは、米国でもっとも巨大なマーケティングキャンペーンであり、明確な期限があり失敗できないプロジェクトの1つだとして、広告業界では知られています。

今回、トランプ再選戦略の骨子となるのが、「トランプ・ブランドブック」で、本当の作戦本部が「ケーブ」なのです。

では、いったいトランプ大統領の本質は、どこにあるのでしょうか?

トランプ大統領の強みとは?

ドナルド・トランプ最大の強みは、適宜変化する姿勢にあります。

ご存知のようにトランプ大統領は、政治家ではなくビジネスマンです。

メディアを煙に巻きながらセールストークを連発し、駆け引きを繰り返しながら、自らのスタンスも変化しつづける。

それが、実態を掴めないといわれる所以でもあります。

振り返れば2016年の大統領選の際、かつて民主党を応援していたトランプ大統領は共和党から立候補しましたが、決して共和党の主流派と相入れることはなく、あくまでもアウトサイダーとして戦いました。

しかし、単なるアウトサイダーなら勝ち上がれるわけがなく、宗旨替えするように党内のふたつの大きな勢力と手を組むことにしました。

そのひとつが、共和党等内の反主流派です。

共和党内の反主流派は、「エヴァンジェリカル」と言われるキリスト教福音派や「最強のロビイスト」全米ライフル協会、そして「オルタナ右翼」のオルトライトなどで、ここに歩み寄りました。

この勝つために変化を続ける姿勢は、現代社会を生き延びる辣腕ビジネスマンそのもので、世間になんと言われようが、利得だけを貫きます。

トランプ大統領の敵とは?

お伝えしたように、米国トランプ大統領の特徴及び強みは、変化自在にあります。

朝令暮改も意に介さず、マスメディアを「リアリティショー」のように扱い、しかし、公約だけは守り通そうとします。

これが、トランプ大統領の本質です。

大阪で開催されたG20で、突如中国の大手通信機器メーカー「華為技術」 (Huawei/ファーウェイ)への禁輸措置を事実上解除すると発表しましたが、数ヶ月前まで、「Huaweiは、中国政府の意向を汲んで、サイバー攻撃やスパイ行為に加担している」と主張していた問題を、この数ヶ月で解決できたとは思えません。

2018年12月には、米国政府関係者から「Huaweiのスマホを分解したら余計なものが見つかった」というコメントが得られた、という報道もありました。

一体、その後どうなったのか、まったく不明のままですが、ともかくトランプ大統領は、Huaweiの禁輸措置を解除する意向を示しました。

また、G20を後にし韓国を訪れたトランプ大統領は、2019年6月30日、韓国と北朝鮮の国境に位置する非武装地帯(DMZ)を突如訪れ、北朝鮮側に越境しました。

現在は「休戦」状態にある朝鮮戦争ですが、敵国の北朝鮮領内に足を踏み入れた現職の米大統領は、トランプが初めてとなります。

トランプ大統領は、金正恩朝鮮労働党委員長と会談したあと報道陣に対し、「まさに歴史的かつ伝説的な日だ」と語り、さらに「彼をすぐにでもホワイトハウスに招きたい」と述べ、正恩氏を首都ワシントンに招待する意向も示しました。

これは、朝鮮戦争の事実上の終結を世界に知らしめる驚くべき出来事である一方、朝鮮半島が緊張状態にあるほうが好都合な人たちがいます。

その代表が、軍需産業を中心とした私企業と軍隊、および政府機関が形成する政治的・経済的・軍事的な勢力の連合体「軍産複合体」で、日本の改憲主義者の事実上のスポンサーと目されています。

この「軍産複合体」は、いまもホワイトハウス内に大きな影響力を持っており、それゆえ、トランプ大統領は彼らを出し抜くように北朝鮮を突如訪問したと思われます。

もし、北朝鮮への訪問が事前にホワイトハウス内で周知されていたとしたら、トランプの訪問を邪魔し、さらなる緊張関係を演出しようとする人たちがいたはずです。

つまり、2020年秋に行われる米国大統領選トランプ最大の敵は、民主党候補ではなく、ホワイトハウスおよび米国政府内の反トランプ陣営なのです。

このなかで、軍産複合体と並んで強力なのがFRBです。

米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会=Federal Reserve Board)は、7名の理事から構成される米国および世界経済の舵取りを担う機関です。

FRBは、トランプの意向にことごとく反対し、今も金利を速過ぎるペースで引き上げており、2019年6月25日、FRBのパウエル議長は「FRBは短期的な政治圧力から遮断されている」とあえて語り、連日、公然と大幅利下げを迫るトランプ大統領に公の場で距離を置く姿勢を明確にしました。

もし、このままFRBがトランプに反旗を翻す状況が続くなら、来年秋までに、FRBが意図してなんらかの「ショック」を市場にもたらし、トランプを窮地に追い込むことも可能です。
それを未然に防ぐべく、トランプ大統領は、空席となっている二人の理事をFRBに送り込もうとしています。

果たして、トランプの目論見通り、FRBに送り込もうとする新理事が利下げし、トランプが言うところの「グレート・アメリカ、再び」の道を歩めるのでしょうか?

それとも、FRBの間接的な手法によって、市場が大きくクラッシュするのでしょうか?

米国の歴史と今後

ここからはトランプ大統領がまとめる国「アメリカ」の今後について考えていきたいと思います。

まず、近代の米国史を見返えしたいと思います。

米国は、1776年に建国された極めて新しい大国です。

欧州からの移民が開拓し、1920年代に大きな栄華を迎えますが、1929年の世界恐慌(米国バブル崩壊)で大きく揺れたものの、公共事業の巨大創出により困難を乗り越え、第二次世界大戦後の1940年代から50年代、ボロボロになった欧州とは相対的に、もっとも輝かしい時代を迎えました。

米国は、ドイツと日本の侵略から欧州とアジアを救って「世界の警察」の位置につき、自動車と電化製品で世界一の国として燦然と輝いたのです。

しかし、60年代に入ると、J.Fケネディが暗殺され、ベトナム戦争が泥沼化しました。

さらに、70年代に入ると内部の利権争いが激しくなり、米ドルの金兌換が停止となるニクソンショック、そしてウォーターゲート事件が起きました。

米国の栄華のバトンは、高度経済成長に沸く日本に引き継がれ、バブル経済崩壊までおよそ25年間「日本の時代」が続きます。

このような歴史を振り返ると、大国でも栄華は25年程度しか持たないことが理解できます。

バトンを渡したあとの80年代の米国は、燦々たるものでした。

ニューヨークの下町では銃声を聞かない日はないほどでした。

そのアメリカは、共和党のロナルド・レーガン大統領が改革を進め、新自由主義に大きく舵を切り、それが今日まで続いています。

まさか?!米国経済は破綻寸前?

次に、前述のように繁栄を極めた米国経済が、今後、破綻する可能性もあるというお話しに入っていきたいと思います。

今週13日のロイターによれば、米ニューヨーク連銀が同日発表した第2四半期の消費者期待調査で、米国の家計債務が過去最大となり、クレジットカードと学生ローンで返済延滞が増えていることが分かりました。

そこで、家計債務が過去最大に膨らんだ米国の経済状況につきまして、お話ししたいと思います。

マクロ経済は、ミクロ経済の集合体に過ぎませんので、ミクロ経済がどうしようもなくなれば、そのしわ寄せはマクロ経済に必ず押し寄せます。

同じく2019年7月のウォール・ストリートジャーナルによれば、連邦政府の支出が歳入を上回ったため、今年度の赤字は867億ドルに達し、前年同期から27%も増加しました。
およそ3割にもおよぶ赤字拡大は、現在の米国の財政を淡々と物語っているように見えます。

また、金融市場で米30年債利回りが過去最低を更新し、景気後退の予兆とされる長短金利の逆転現象(逆イールド)が12年ぶりに起きました。

前回は、2007年にこの現象が起き、その翌年にリーマンショックが起きたことは、記憶に新しいところです。

さらに同日、英国債のイールドカーブも逆転しました。

このような英米同時多発逆イールドは、史上初の現象で、米国だけでなく世界に経済を取り巻く環境が崖っぷちに立っていることを教えています。

どちらにしろ、リーマンショック以来の金利市場が発する「景気後退の警報」なのは客観的に見ても濃厚です。

当然、株価は暴落しています。


下落幅は、前日比800ドル減少で今年最大となりました。

トランプ大統領は、長短金利の逆転現象が起きたことについて「狂っている」とツイッターに投稿。

米中貿易摩擦で米経済の減速懸念が強まる中、早期利下げに取り組まなかったとして、原因はFRBの金融政策にあるとの認識を示していますが、本質的には米中問題だけではありません。

過去十年に及んだ金融緩和のツケが、そろそろ表面化してきたと考えてもいいのではないでしょうか?

過去50年間、逆イールドが起きると1年後から2年後にほぼ100%の確率で景気後退局面に突入します。

前回はリーマンショック、前々回はITバブル崩壊でしたが、近年の金融緩和の影響で、史上最大の不況が訪れてもおかしくありません。

それが、「新・世界恐慌」です。

しかし、過去の逆イールド発生時には、FRBが慌てて「強引なバブル」を演出したこともありました。

つまり、今後予測される「パターンA」で、逆イールド発生→強引なバブル創出→大暴落となるか、「パターンB」で、逆イールド発生→上がり下がりしながら下降局面→大暴落となるのか、歴史的にはこのふたつしか見受けられません。

トランプ大統領が出馬表明している選挙に向け、同時に大きな時代の転換点が、きっと訪れるでしょう。